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日本企業の部長の給料がタイより安い「賃金低迷」の現実

7月29日、山際大志郎経済再生担当相が'22年度の「経済財政白書」を閣議に提出した。国民経済の動向を分析し、今後とるべき政策の指針を示す文書であり、こんな内容が含まれていた。
・世界的な物価上昇と海外への所得流出という新たな試練を迎えている
物価上昇率に見合った、継続的な賃上げが必要

ここでも指摘されているように、日本の賃金は世界の水準と比べるとかなり見劣りする。たとえばIT大手のアマゾンは今年2月、アメリカ国内で働く技術職や事務職などの年収(基本給)の上限を約2倍の約4000万円に引き上げるという措置を公表している。労働市場の競争が高まり、優秀な人材の奪い合いが激しさを増すなかで、年収の引き上げは必要な対策のようだ。

世界経済をリードする「GAFAM」なら、それだけ給与が高くても当然だと思われたかもしれない。しかし残念ながら、日本人の給与は発展途上国と比べても低い水準にある。

今年5月に経済産業省が公表した「未来人材ビジョン」を読み解いてみよう。この報告書によると、アメリカ・中国・インド・タイと比較して、日本は部長への昇進が遅いということが読み取れる。

部長への昇進年齢はアメリカが37.2歳、中国が29.8歳、インドが29.8歳、タイが32歳だが、日本は44歳で、一番遅くなっている。にもかかわらず、ここまで昇進したところで、日本企業の部長の年収は、タイよりも低い水準となっている。

しかも報告書によれば、日本の部長の年収は1600万円前後。一方、タイは2000万円で、アメリカやシンガポールは3000万円弱と、かなりの差がついているのだ。

社員教育にもカネを使わない

別の指標も見てみよう。「一人当たりGDP」は個人の豊かさを示す数値だが、日本経済研究センターが昨年12月、衝撃的な予測を発表した。'27年に韓国、'28年に台湾が、日本の一人当たりGDPを追い越す可能性があるというのだ。なぜ、日本の賃金や経済力はここまで低迷してしまったのだろうか。複合的な要因があるため簡単に回答することは難しいが、確かな数字として表れている原因もある。

それは、人的資本に対する投資意欲の低さだ。'10年から'14年における人材投資(社員研修など、OJTを除く)は、対GDP比でアメリカが2.08%、フランスが1.78%、ドイツが1.2%、イタリアが1.09%、イギリスが1.06%である一方、日本はわずか0.1%しかない。すなわち、日本企業は欧州の1割しか人材に投資していないのだ。

個人の意識についても、人的資本への意識は低い。会社と関係なく「社外学習・自己啓発を行っている人」の割合は、タイ・インド・中国・シンガポール・香港・台湾・オーストラリアなどでは概ね75%を超えている。ところが日本では54%の人しか社外での自己研鑽を行っていない。

鏡の国のアリス』には「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」という有名なセリフがある。資本主義の経済も同じで、日本が先進国の地位を維持するためには、日々、努力し続ける必要があるのかもしれない。